煙草の吸い殻

煙草は吸わない

リモート受付事務員

車の廃車手続きへ

長年乗った車を廃車するために、廃車専門の業者へ手続きに行ってきた。

手続きの段取りとしては、廃車する車を事務所へ持込み、車検証などの必要な書類と認印を準備して、廃車の書類手続きを行うというものだ。

朝一で駅近くの事務所へ。車を事務所駐車場の適当な場所へ停めて、道沿いの事務所に向かう。

事務所の窓越しに若い女性スタッフが二人だけで、すでに忙しそうに電話応対に追われていた。

入店前からなんだか嫌な予感がしたが、軽く挨拶を交わすと、マネージャーらしき女性に「そちらの席でお願いします。」と案内される。

俺「お願いしますって。。そちらの席ですか??」

マネ「はい、そちらでご記入ください。」

俺「記入。。ですか???」

すこし戸惑う。

受付スタッフがいない

案内されるがままに席へ着く。机の上には椅子が一つだけで、確かに記入するための受付書類がクリアファイルにまとめられていている。書類を確認すると先に自分が伝えていおいた自分の車の情報が記入されていた。

右側にはモニターがあり、画面が4分割されている。自分の姿が2画面、机の書類真上からと自分の手元の画面が映し出されていた。

カメラが数台設置されていることが分かったが、どこにあるのかは敢えて探す気になれない。。

左側には電話機が1台。なんだか異様な感じがした。

マネ「電話が鳴ったら出てください。そして、1をプッシュしてください。」

俺「・・わかりました」と言われるがまま。。

リモート受付事務員登場

ほどなくして電話が鳴る。普通に受話器を取りダイヤル1を押す。。

リモ「ありがとうございます。。廃車受付担当の○○と申します。」

自動案内ではなく、普通のオペレータ風の女性の声だ。

俺の人生初。リモート受付事務員の登場である。。

リモ「それでは手前の受付用紙に必要事項を記入してください。」

俺「え?どの箇所からですか??」

リモ「用紙の左上、お名前と住所、生年月日のところです。」

モニターを見ると、記入用紙が映し出されている。この映像がここではない本社事務所に転送されて、そこに電話先のオペレーターがいるようだ。モニターが4画面あるのは自分の様子や書類の確認のためだ。。と理解する。

しかし、この事務所内の二人のスタッフはこちらの様子を気にすることもなく、忙しく電話応対に追われている。

ここはとりあえずリモート受付事務員の指示に従う。

リモ「2枚目の申請書の裏、その左下にある米印の1番にご印鑑を押して下さい。」

俺「はい押しました。ハイ確認しました。。」

リモ「その印鑑の箇所から右にマスで三つ目の署名の隣の薄い印の字に…。」

俺「はい記入しました。ハイ確認しました。。」

リモート受付事務員の説明は恐ろしく早口で、聞き取るのがやっとだった。それでも何とか書類を書き上げた。

リモ「では、最後に書類をご確認ください。」

俺「はい確認しました。。」

リモ「それではこれで完了です。それでは本日はありがとうございました。失礼いたします。。」

それで終わった。。この間約10分。なんだか疲れた。。

だがしかし、この事務所内の二人のスタッフはこちらの様子を気にすることもなく、忙しく電話応対に追われている。。

「ありがとうございました。失礼します。。」と軽く挨拶を交わして事務所を後にした。

なんだかまるで自分もそこで一日仕事をしたような気分だった。

合理的な人員配置

事務所に二人しかスタッフがいなくて、来客の対応にさえ時間が足らないなら、お客様の画像と音声を転送してやり取りする仕組みを作り、その先で他所のスタッフをリモートで稼働させる。。この手法はお客としての自分にとってなんだか強引な感じがしたのと、カメラと自分とは向き合わない事務所内のスタッフに監視されているような気がしなくもなかった。

だけど、明らかに人手が足りてないように感じたということと、リモートワークの仕組みに少し工夫をして、他所のスタッフが稼働することにより、人手を補うことが可能なのだという場面を目の当たりにしたとき、自分としてはこのやり方はとても合理的だと感じた。

こういった手法で煩雑な受付作業を単にスタッフを補うのではなく、IT技術を活用して接客の形式をセルフサービス的に変えることで簡素化するというやり方は、これからの主流になっていくのだろうな。別にAI技術ではなくても、既存のIT技術を応用する発想はおそらくコロナ過のリモートワークの影響なのだろうな。。

最後に廃車した愛車に別れを告げ、すこし寂し気な感覚を味わいながら、ゆっくり歩いて帰った。